潤滑油 用語説明
可燃性液体類とは
可燃性液体類の定義
潤滑油で引火点250℃(1気圧)以上のものは(ギヤ油・シリンダ油を除く)、消防法の危険物から除外され、可燃性液体類に分類されます。
可燃性液体類を使用することで、貯蔵・取扱いにおける規制が緩和されます。
ただし、保管数量2,000L以上の場合は、市長村条例における指定可燃物としての規制を受けるため、所轄消防署への届出が必要になります。
可燃性液体類と第4石油類の比較
取り扱い数量による届け出が免除されたり、保有空き地、避雷針設置の免除など、取り扱いが緩和されます。
指定数量の計算例
建屋①の機械Aを可燃性液体類へ切り替える事で、危険物施設から少量危険物取扱所となります。
指定数量の計算シミュレーション
指定数量の倍数計算例
複数の危険物を保有している場合は、倍数を計算する必要があります。
粘度指数とは
粘度指数 用語説明
潤滑油の粘度は、温度の影響を強く受けます。しかし、温度に対する粘度の変化率は油の種類によって異なります。
その指標を表したものを「粘度指数」といい、温度変化に対して粘度変化が小さいオイルは粘度指数が高い値を示します。
したがって、高粘度指数油の方が温度が変化しても粘度が変化しにくいという事が言えます。
粘度指数の違いによる油温と粘度の関係
※潤滑油の粘度は32番、46番といった表現をしますが、これは40℃の時の動粘度を示しています 「傾きが小さいオイル=温度によって粘度が変わりにくいオイル=粘度指数が高いオイル」
高粘度指数油のメリット
・冬場の暖機運転にかかる時間を短縮出来る→生産性向上・暖機運転にかかる電気代削減
・油温が上昇しても粘度が低下しにくいので油膜が保たれる→安定稼働・油漏れ減少
作動油の省エネメカニズム
油圧装置におけるエネルギー損失
作動油による省エネルギーの原理①
作動油による省エネルギーの原理②
スラッジが及ぼす影響
スラッジとは
油中に含まれる「スラッジ」とは、主に潤滑油を使用中に変質して出てくる油の不溶分、外部から侵入したゴミ、機器が摩耗・腐食する事で発生する摩耗紛をさします。
特に、油圧機器におけるトラブルの多くは、これらのスラッジが原因であることが多いです。
スラッジによるトラブル例
1)油圧バルブの不具合
2)油圧ポンプの不具合
スラッジの対策法
潤滑油に起因するスラッジの場合は、熱劣化に強い潤滑油の使用を推奨します。
熱に弱いと潤滑油が熱に耐えられず、生成された炭素が蓄積した結果、スラッジになります。
使用する潤滑油(特にベースオイルの性能)によってスラッジの発生量に差がでます。
エンジンオイル規格の変遷
日本と米国のオイル規格の変遷
規格の特徴
API CK-4を元にした海外OEM規格
※✓✓(厳)・・・CK-4に比べて厳しい要求値を設定
排ガス規制について
排出ガス規制物質
PMとNOxの削減は両立出来ない関係
排ガス対策装置
PM低減装置
-
① DPF (Diesel Paticulate Filter)
PMをフィルターで捕えて燃焼させる
-
② ターボチャージャー
多くの空気を送り込み、燃料を完全燃焼
-
③ コモンレール式噴射装置
噴射圧力・噴射量・噴射時間をコントロールし、燃料を最適燃焼
NOx低減装置
-
① EGRクーラー
排ガスを利用して燃焼温度を下げ、NOxを低減
-
② 尿素SCR
SCR触媒でNOxを窒素と水に還元
排ガス規制に対応するオイル規格
DPFトラブルが起こるメカニズム
DPFとは
DPFとは、ディーゼルエンジンの排気ガス中の粒子状物質(PM)を補足し排気ガスをクリーンにするエンジン補機で、酸化触媒とセラミックフィルターから構成されています。
酸化触媒とは、ハニカム構造の触媒に白金やパラジウムなどの貴金属が塗布されており、それらの力によって燃焼温度を上昇させます。
そして、この高温となったガスをDPFに吹き付けることでDPFに溜まったススの燃焼させます。
DPF燃焼の仕組み
排ガス中に含まれるPMは燃焼によって減少しますが、エンジンオイル中に含まれる灰分(金属分)は焼ききれずに残ります。
DPF目詰りの物質
PMの成分構成において潤滑油成分(この場合はオイル飛沫がススやカーボンの表面に着く形)が5割前後も占めています。
この事から、排ガス中に含まれるススには、多量のエンジンオイルが含まれている事がわかります。
DPF目詰りの様子
DPFトラブル軽減メカニズム
エンジンオイルを変更する事でDPFトラブル軽減
PMの成分構成において潤滑油成分(この場合はオイル飛沫がススやカーボンの表面に着く形)が5割前後も占めています。
DPF目詰まりを軽減するためには、以下2つの観点でのオイル選定が重要です。
1)カーボンの生成量が少ないエンジンオイルを選定すること
2)オイル消費量が少ない(蒸発量が少ない)エンジンオイルを選定すること
1)カーボン生成量の少ないエンジンオイルとは
エンジン燃焼室で軽油とともに燃焼されたエンジンオイルからカーボンが生成されますが、そのカーボンの由来の一つはエンジンオイルに含まれる粘度指数向上剤と呼ばれる添加剤です。
粘度指数向上剤とは
・低温始動性や省燃費性を向上させるためにマルチグレードオイルには必須の添加剤
・粘度指数向上剤はベースオイルと比較して非常に高い粘着性を有する
・高温にさらされるとカーボン化(炭化)しやすいという特徴を持つ
粘度指数向上剤のカーボン化
粘度指数向上剤はベースオイルと比較して非常に大きな分子量の化合物であり、また粘着性を有しています。
そのため高温にさらされるとカーボン化(炭化)しやすいという特徴を持ちます
上の写真は、ベースオイルと粘度指数向上剤それぞれを高温にさらしたあとの残渣物です。粘度指数向上剤は残渣物が多く、ドロッとした粘着状になっています。この粘着状の残渣物がカーボンで、これがDPF目詰まりを促進させます。
カーボン生成量の少ないエンジンオイルとは
「粘度指数向上剤の添加量を少ないエンジンオイル」
DPF目詰まり改善を図るなら粘度指数向上剤の添加量に着目してエンジンオイルを選定頂くことをお勧めします。
●オイルによるカーボン化量は下記試験結果で確認出来ます。
【パネルコーキング試験】
・規定温度に加熱したアルミ板に試験油を規定サイクルではねかけ、3時間のアルミ板に付着したカーボン堆積量を計測
2)オイル消費量が少ない(蒸発量が少ない)エンジンオイルとは
エンジンオイルはベースオイル(基油)と各種添加剤から構成されます。エンジンオイルの蒸発特性(蒸発のしやすさ)は主に、エンジンオイルの粘度と、エンジンオイルを構成するベースオイルのタイプによって左右されます。
粘度による蒸発特性
通常、粘度が高いオイルほど蒸発しにくい傾向があります。
下記の図は、オイルの粘度・ベースオイルの分子量・蒸発特性のイメージを示したものです。
ベースオイルによる蒸発特性
また同じ粘度どうしを比較した場合、合成油や精製度の高いベースオイルほど、一般的な鉱物油よりも蒸発しにくい傾向があります。
記の図は、同じ粘度を前提としたベースオイルのタイプ別の分子量分布のイメージです。分子量が小さい留分は蒸発しやすいため、同じ粘度であっても低分子留分の少ない合成油は蒸発しにくい特徴を持ちます。
蒸発量の少ないエンジンオイルとは
「粘度が高い&ベースオイルのタイプが合成油のエンジンオイル」
DPF目詰まり改善を図るなら粘度とベースオイルに着目してエンジンオイルを選定頂くことをお勧めします。
●オイルによる蒸発量は下記試験結果で確認出来ます。
グリース増ちょう剤の特徴
グリースの構造について
グリースの成分は、基本的には、基油(原料油)と増ちょう剤、添加剤の3つからなります。
潤滑油として使う液体を基油に、増ちょう剤と呼ばれる親油性の強い固体を分散させ半固体とした潤滑剤です。
増ちょう剤は、スポンジのように、潤滑油を吸収し、潤滑油を閉じ込めます。
グリース潤滑では、増ちょう剤に吸収された潤滑油により潤滑性能を揮します。
増ちょう剤によるグリース分類および主な特徴と用途
増ちょう剤はその種類により、グリースとしての耐熱性、耐水性、機械安定性に影響を与えます。
使用時の温度、使用環境により増ちょう剤を使い分ける必要があります。
異なる増ちょう剤によるグリースの混合可否
異種増ちょう剤グリースの混合・混入は、増ちょう剤の繊維形状が異なるため、軟化や硬化・耐熱性の低下などグリースの性能劣化に
極端に現れることがあります。 せっかく高性能グリースを入れてもその性能が発揮できないことも考えられますので
油種切り替えの際は、増ちょう剤の種類をよく確認した上、必要に応じて前のグリースを十分に取り除く事が必要があります。
添加剤の種類と役割
添加剤別役割
摩耗防止剤
高荷重下あるいは低速度下の境界潤滑領域で、油膜と金属表面の酸化保護被膜が破れた時に、金属表面と反応して別の被膜を形成し、金属面の摩耗を防止します。リン系化合物、有機金属系化合物が代表的です。
酸化防止剤
潤滑油が使用される状況下では、空気との触れ合い、油温の上昇、水分の混入、各種金属との接触など、潤滑油の酸化劣化は避けられません。
酸化防止剤は、これらの酸化反応速度を遅らせ、使用油の寿命延長を行います。
清浄分散剤
主にエンジン油において用いられる添加剤です。エンジンの汚れは、燃料の不完全燃焼生成物、潤滑油の酸化生成物によります。
これらは、ピストンに付着したり、オイルタンク内で凝集したりし、エンジンの不具合を起こす原因となります。洗浄剤は汚れをピストンに
付着させにくくし、分散剤は汚れを油中に細かい粒子の状態で分散浮遊させる作用をします。
粘度指数向上剤
各種ポリマーを用いてより広い温度範囲で粘度、温度特性を向上させます。ポリマーの具体的な働きとして、ポリマーは糸くずのボールの
ような状態で油中を浮遊しており、油温が高くなると、この糸くず状がほどけ、周囲の基油と相互作用し、粘度を上昇させます。そのため、
油温が上昇しても、粘度が低下しにくくなります。ただし、ポリマーはせん断によって小さな分子に変わってしまう問題があります。
流動点降下剤
潤滑油は低温になるに従って粘度が増加するとともに、油中にに含まれるワックス分が析出し、ワックスの結晶が結合し合って流動しにくくなります。流動点降下剤は、この析出ワックス分の結合を妨げることにより、流動性をより低温まで保持する働きをします。
極圧剤
極圧条件で、摩擦、摩耗、焼付きを防ぐために使用されます。硫黄系化合物が代表的で、表面に吸着したあと、せん断応力の低い硫化鉄が無機反応被膜として生成します。ギヤ油、金属加工油などに添加されており、反応度合いによって活性タイプ、不活性タイプがあり、活性度の高いものは、非鉄金属を変色させることがあります。また、SP系極圧剤は、硫黄およびリン系極圧剤を指します。
防錆剤
金属表面に吸着膜を形成して、空気や水などと接触するのを防ぎ、錆の発生を防止します。
また、酸化防止剤と防錆剤だけを含む潤滑油をR&Oタイプ油といいます。
消泡剤
使用油に攪拌され空気をかみ込んだ場合など、泡が激しく発生して消えにくいことがあります。消泡剤は、発生した泡の泡膜に吸着・侵入して、泡膜を破壊する効果を持ちます。ジメチルシリコーンが代表的です。
摩擦調整剤
摩擦調整剤は、潤滑油の摩擦係数を上下させる働きをします。特に摩擦係数を下げる場合に多く用いられ、境界潤滑が存在する、エンジン油、しゅう動面油、アクスル油などで使用されています。
抗乳化剤
水とエマルジョンを破壊する作用を示し、潤滑油の乳化を防ぐ働きをします。