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オイルアカデミー

潤滑油 要求性能

油圧作動油の要求性能

適性粘度

油圧作動装置を最も効率よく、その性能を充分に発揮させるためには、装置の種類や大きさ、油温などを考慮して、適性粘度の油を選ぶことが必要。
適性粘度をはずれた状態で運転された装置では、ポンプの吸込み不良、内部漏洩、潤滑不良、バルブの作動不良、回路内発熱などが生じ、正確で円滑な作動ができなくなるだけではなく、機器の寿命の短縮や大きな事故につながることになります。
また、粘度指数が高い油を選択することで、運転時の油温の変動が大きい場合でも、上記トラブルを防ぐことができます。

熱・酸化安定性

油が高温になったり、空気が混入したりするので、油圧作動装置は一般的な運転条件から作動油が酸化劣化しやすい状態にあります。
油が酸化されてスラッジができると、各種制御弁の精密な作動が妨げられたり、油圧ポンプなどの滑動部分が摩耗しやすくなったりします。
長期の使用に耐えるためには、熱・酸化安定性が優れた油圧作動油を選ぶ必要があります。

消泡性と放気性

油圧作動装置は加圧・減圧が繰り返されるので、油圧作動中に空気が混入してしまい、特に減圧時において、混入した空気が激しく泡立つことがあります。
消泡性は、油圧タンクの油圧作動油表面上に発生する泡を消滅させる性能であり、放気性は長時間に渡って油中に存在する泡を消滅させる性能。
油が泡立つと、加圧されたときに油温が高くなり、劣化しやすくなるだけではなく、作動不良を起こす。
また、油中の泡を消滅させないと、大音量の騒音発生ばかりか、各種油圧作動装置の損傷を発生させる原因となります。

耐摩耗性

油圧作動油の主な働きは力を伝えることと同時に油圧ポンプなどの滑動部分の摩耗を少なくすることや潤滑箇所からの油漏れを防ぎ、効率を保つ働きも要求されます。

抗乳化性

作動環境に左右されて、油圧作動油の水分含有率は高くなっていき、その水分が油を乳化させます。
乳化すると、潤滑不良や作動不良を引き起こすので、作動油としては水分離が良く、乳化しにくいものが要求されます。

防錆性と腐食防止性

水分や酸化生成物は油圧機器の内壁に錆を発生させます。ここで金属面が発錆したり、腐食されたりしないようにするため、油圧作動油には防錆性が必要。
また、油圧作動装置を構成する各種部品には、多種に渡る非鉄金属類が使用されているため、非鉄金属類に対する腐食防止性も要求されます。

低温流動性

作動油の流動点は、一般に最低使用温度より11℃以上低いことが要求されます。低温流動性が優れていると、ポンプの吸い込み抵抗を減らす効果があります。

油圧作動装置のしくみ

油圧作動装置の原理

油圧作動装置は、ポンプ動力を油に伝えることで、その動力を流体エネルギーに変換させ、さらに油の流体エネルギーをシリンダに伝えることで機械的エネルギーに復元させ、より大きい動力に変えて伝達をおこなうものであります。
この動力伝達を大きくするしくみとして、「パスカルの原理」を利用しています。

パスカルの原理とは

密封された容器の静止流体に加えられた圧力は、流体の各部に等しい強さで伝達され、圧力は面に直角に作用し、各点の圧力はすべての方向に等しい。

油圧作動装置の一例

オイルタンク内の油圧作動油はサクションフィルタを通して、油圧ポンプに吸い上げられ、加圧されます。
その後、圧力油はラインフィルタを通り、油圧シリンダに送られます。
油圧シリンダの作動方向は方向制御弁により切替可能であり、作動速度は流量制御弁によって調整できます。
無圧油がオイルタンクに戻ることで油圧作動油は循環します。
なお、回路内の最高圧力は圧力制御弁により決定されます。

油圧作動装置の構成

油圧ポンプ

油圧ポンプは、油に圧力と流量を与えることで、機械エネルギーを流体エネルギーに変換し、油圧シリンダや油圧モーターを動かす仕事をします。油圧ポンプは圧力源として、油圧作動装置の重要な要素の一つとなります。
ポンプの種類は大きく分けて「ギヤポンプ」、「ベーンポンプ」、「ピストンポンプ」の3つがあります。

ギヤポンプ(外接式)

2つの歯車がケーシング内で嚙み合っており、その歯車の回転によって生じる吸引力で 油を吸込み側から吐出し側に押し出す形式のポンプのこと。
歯車の嚙み合い形式が異なる「内接式」と「外接式」が存在します。

ベーンポンプ

ケーシング(カムリング)に接しているベーン(羽根)をローター内にもち、ベーン間に吸い込んだ液体を 押し出す形式のポンプ。ローターが半回転するごとに吸込み側の油が吐出し側に運ばれます。
特に、高圧時におけるベーンの摩耗容量形と、吐出量が変えられる可変容量形があり、可変容量形には 偏心量を調整する機構を組み込み、1回転当たりの吐出量を変化させています。

ピストンポンプ

ピストンの往復運動による容積変化を利用して、油を吸込み側から吐出し側に押し出す形式のポンプ。
ピストン配列の違いにより、ラジアル形とアキシャル形に分類され、さらにアキシャル形は構造の違いで 斜板形と斜軸形に分けられます。

各種ポンプの特徴
ポンプの種類 長所 短所 適用機械 吐出圧[Mpa]
ギヤポンプ(外接式)
  • 内部構造が簡単
  • 小型軽量で安価
  • 吐出量変化不可
  • 騒音大きい
コンクリート
ミキサー車
1~20
ベーンポンプ
  • 音が静か
  • 価格安価
  • 入手性良好
  • ピストンとの比較で効率低い
  • 可変タイプは高圧不可
  • 高圧では、耐摩耗性油必要
  • 作動油の汚染に敏感
一般産業機械 1~24
ピストンポンプ
  • 吐出圧が高い
  • 効率が高い
  • 耐久性が良い
  • 吐出量変化可
  • 利用範囲広い
  • 構造が複雑
  • 作動油の汚染に敏感
建設機械
一般産業機械
1~34
各種制御弁

各種制御弁には「圧力制御弁(リリーフ弁)」、「方向制御弁」、「流量制御弁」の3つがあります。

圧力制御弁(リリーフ弁)

油圧作動油の圧力を制御します、つまりは仕事の「大きさ」を決める働きを担う。
圧力制御弁内にばねが入っており、ばねの力と油圧のバランスで回路を開閉して圧力をコントロールします。
圧力制御弁の中でも、リリーフ弁は油圧回路内の圧力を設定値以下に制限する弁のことをいいです、回路の圧力が弁の設定圧力に 達した場合に、油の一部または全量を戻り側へ逃がす。

方向制御弁

油圧作動油の方向を制御します、つまりは仕事の「方向」を決める働きを担う。
方向制御弁で油の流れを切り替えることによって、シリンダの動く方向を変化させます。手動で操作する弁と、電磁石(ソレノイド)の 磁力を用いて制御する電磁操作弁があります。

流量制御弁

油圧作動油の流量を制御します、つまりは仕事の「速さ」を決める働きを担う。
弁体を貫通するねじ棒(弁棒)の先が円錐になっており、油の流路を調整することで流量を制御します。
構造は簡単ではあるが、温度や圧力が変化すると、流量も変化します。逆止弁ついているものは、圧力補償機構により正確な調整が 可能になっています。

アクチュエータ

アクチュエータとは、入力されたエネルギーを物理的な運動へと変換する機構のことであります。
油圧装置の場合、実際に仕事をおこなう油圧シリンダや油圧モーターがこれに当たます。油の圧力と流量を往復運動などの仕事に変える機器が油圧シリンダで、回転運動んどの仕事に変える機器が油圧モーターであります。

オイルタンク

オイルタンクの役割は、オイルの貯蔵、冷却、ゴミや水分、気泡の除去が挙げられます。
構造としては、左記概略図のようになっており、必要な油量を蓄えることができ、異物が入らないように密閉されているが必須であります。また、戻り管側と吸入管側との間は、気泡が行き来できないようにバッフルプレートで隔てられています。
タンクの底面はゴミを取り出せるように傾いており、排油口(ドレン)が取り付けられています。

オイルタンク概略図

軸受油の要求性能

粘度(ちょう度)

適切な粘度(グリースの場合はちょう度)を有する必要があります。

粘度・温度特性

低温流動性(流動点が関係)が良く、高温度域でも適正な粘度を保持していること(粘度指数が関係)が望まれます。
グリースの場合には、低温特性として低トルクであることと、滴点が高く耐熱性を有していることが重要となります。

潤滑性(油性・耐摩耗性)

高速軸受の場合、あるいは荷重が大きい条件で使われる場合、潤滑性は特に重要となります。

錆止め性、腐食防止性を有すること

熱・酸化安定性

特に高温度域で使われる軸受や撹拌が激しい転がり軸受(空域との接触及び発熱)において循環給油される場合に重要となります。

抗乳化性、水分離性

乳化すると、潤滑性が低下するだけでなく、錆や劣化物の生成に繋がります。

優れた消泡性・放気性を有すること

機械的安定性(グリース)

機械的安定性が低いと、機械的せん断によってちょう度が変化し、グリースの漏れや潤滑不良、騒音などの原因となります。

軸受音響特性(グリース)

転がり軸受から発生する音と振動の性質をいう。ちょう度が適切で、グリースが均質であれば騒音や振動を防止することができます。

軸受のしくみ

軸受を使用していない機械はないといっていいくらい、あらゆる機関や各種機械に使用されています。
ある意味では、軸受は機械の生命といえるほど重要な役割をもっています。

軸受の種類

軸受には非常に多くの種類が存在するが、特殊なものを除けば、「すべり軸受」と「ころがり軸受」の2つに大別されます。

すべり軸受_すべり摩擦を利用したもの
ジャーナル軸受

軸に対して垂直の荷重を受ける

スラスト軸受

軸に対して並行の荷重を受ける

ころがり軸受_ころがり摩擦を利用したもの
ラジアル軸受

軸に対して垂直の荷重を受ける

スラスト軸受

軸に対して並行の荷重を受ける

すべり軸受、ころがり軸受ともに、回転軸を浮かせる力の発生方法によっても「静圧軸受」と「動圧軸受」に分類されます。

静圧軸受

昇圧した流体を導入して、回転軸を浮かせる方法

動圧軸受

すべり運動により、回転軸を流体膜の上に浮かせる方法

タービン油の要求性能

酸化安定性

高温で使用されるため、劣化してスラッジが生成し、フィルタなどの目詰まりを引き起こす。
このようなことを防止するため。酸化安定性が良いことが必要。

水分離性、抗乳化性

凝縮水分が混入しても、ただちに分離して、乳化を起こさないことが必要。そのために高度に精製された鉱油が使われます。

防錆性

水の混入などで錆び易い条件にあるため、高度の防錆性が要求されます。

消泡性

空気と激しく撹拌されるため、泡立ち易い状態になります。その気泡は酸化の原因となり、特に気泡が断熱圧縮された場合には、タービン油の局部加熱などが起きます。したがって、過度の泡立ちを抑えるため、タービン油には特に精製度の高い油が使用されます。

タービンのしくみ

タービンは、数枚ないし数十枚の羽根をもつ本体に、蒸気、ガス、水などの作動液体を吹き付けることで軸を回転させ、これら流体の持つ運動エネルギーを機械的なエネルギー(回転運動のエネルギー)に変換する機械の総称であります。
作動流体の種類によって、蒸気タービン、水力タービン、ガスタービンに分けられます。

蒸気タービン

外部の熱源(ボイラーなど)により高温高圧となった蒸気がノズルから噴射されると、圧力や温度が低下すると同時に、蒸気の移動速度が増す。この蒸気が羽根に当たることで羽根に力が加わり、この力がトルクとなって軸を回転させ、発電機やポンプを駆動させます。つまりは、蒸気の持つ熱エネルギーから羽根車の回転を介して動力を取り出す原動機のことを蒸気タービンと呼ぶ。
主に火力、原子力、地熱発電などによる発電や、産業用途(ポンプ駆動など)に利用され、蒸気としては一般に水蒸気が使われます。

ガスタービン

燃料(灯油、軽油、LNGなど)を燃やした燃焼ガスで羽根車を回転させ、燃焼ガスの運動エネルギーを機械的エネルギーに変換する原動機のことをガスタービンと言う。また、ガスタービンは「ガスタービンエンジン」とも呼ばれ、言わば内燃機関の一種であります。
高温の気体の流れによりタービンを回転させることで、動力または推進力を発生させることのできる熱機関のことを言う。
主には飛行機のジェットエンジンや発電に用いられます。メリットとしては、小型で高出力が得られることがあげられ、他の内燃機関であるディーゼルエンジンと比べると、窒素酸化物や炭化水素の抑制が行いやすく、省スペース化に貢献しています。
発電以外にも、始動時間の短さを理由として、緊急災害時にポンプ駆動用として活躍するほか、ウォータージェット推進装置(高速船の推進装置)の駆動源としても採用されています。

水力タービン

河川の流れや落差による水の力を利用して水車(羽根車)を回転させ、水の持つ位置エネルギーや運動エネルギーを、機械的エネルギーに変換する原動機のことを水力タービンと言う。
水の位置エネルギーと運動エネルギーの双方を使用する反動タービンと、運動エネルギーのみを利用する衝動タービンの2種類に分けられます。主には水力発電に使用されます。

摺動面油の要求性能

摩擦特性(スティックスリップ防止性)

摺動面が低速・高荷重で動くとき、比較的摩擦抵抗が大きくなり、停止−発進−停止−発進の小刻みな運動(スティックスリップ現象)を起こす場合があります。これが起こると、精密な加工が困難になるので、摺動面用潤滑油には、耐スティックスリップ性能が要求されます。

油膜保持性

摺動面では、高荷重がかかることや、止まった状態で振動や荷重を受けるので、油膜切れが起きやすく、これを防ぐために高い油膜保持性が要求されます。

切削液分離性

摺動面では、水溶性切削液(クーラント)を用いることがあります。切削液が混入することで、油が乳化し、工具や機器に悪影響を及ぼす。この乳化物中では微生物が繁殖しやすいことから、腐敗により悪臭を発生させ、作業環境を悪化させます。
そのため、クーラントに対する良好な分離性を有することで、工具寿命の延長やクーラントの腐敗防止などのメンテナンス低減ができます。

摺動面のしくみ

摺動面とは、2つの物体が接触面に対して平行に「すべっている」面のことを言う。
この摺動面を有しているものの代表例が工作機械であります。
JISでは、工作機械は「主として金属の工作物を切削・研削などによって、または電気、その他のエネルギーを利用して不要部分を取り除き、所要の形状に作り上げる機械」と定義されています。
左記図中の黒枠で囲んだ案内面部分の潤滑に摺動面油が使用されます。
案内面の潤滑によって加工物を乗せるテーブルの移動をおこなうため、摺動面油の性能は、加工精度に大きく影響します。

すべり案内

潤滑油を基準面間に供給し、走行中に形成される潤滑膜を利用する方式。
接触面が大きく、振動減衰性が良いので、大きな負荷や切削力のかかる機械の案内面に適しています。

ころがり案内(リニアガイド)

ころ(もしくは玉)を基準面上で転がし、低いころがり抵抗を利用して案内する方式。
すべり案内方式に比べ摩擦抵抗や速度依存性は小さいという特徴があります。
グリース潤滑によるリニアガイドがよく利用されており、比較的小さな切削力で高速送りが必要な箇所に適しています。

静圧案内

油に圧力をかけ供給し移動体を浮上させ案内する方式。

工業用ギヤ油の要求性能

粘度と粘度指数

歯と歯の間に油膜をつくって、摩擦を減らし、金属接触を防いで摩耗を防止するためには、始動困難や動力損失などの支障がない限り、高めの粘度と適切な粘度指数を有する油を使用するのが安全(撹拌抵抗による発熱に注意。高速ギヤには低めの粘度の油が適しています)。

耐荷重能および耐摩耗性

高い荷重を受けてすべる時、あるいはショック荷重を受ける時、摩擦面は高温となり、油膜が切れて金属接触が起こり、ギヤが摩耗します。
これを防ぐために耐荷重能のある油を使用することが必要。
例として、添加剤と金属面が反応して表面に新しい化合物を作り、金属接触による焼付きを防止する活性型および不活性型極圧潤滑油があります。

腐食防止性・防錆性

潤滑油が劣化して、腐食性酸化生成物ができたり、また水分が混入すると錆や腐食の原因となります。また、銅合金等を含むギヤは、活性型極圧剤を含む潤滑油を用いると腐食が進行してしまうので、不活性極圧剤を含む潤滑油が好ましい。

熱・酸化安定性

油は高温や水分などのために酸化されて劣化します。ギヤ油は飛沫給油で6ヶ月以上、強制潤滑給油では数年以上使用する場合があるので、精製度が高く、酸化安定性に優れていることが必要。

水分離性(抗乳化性)

油に水分が入って乳化を起こすと、十分な潤滑ができなくなるばかりでなく、錆やスラッジが発生します。誤って混入しても乳化を起こしにくく、すみやかに水を分離する性能をもつ油を使用することが必要。

消泡性

ギヤの回転につれて、油が撹拌されて泡立つと、油膜切れを起こし、潤滑能力が低下する場合があるので、消泡性の良いことが望まれます。

その他

上記以外に、流動点が低いことや付着性のあることなどが重要な場合もあります。

ギヤのしくみ

ギヤのはたらき

ギヤ(歯車)は、これが使用されない機械はないといってよい程、あらゆる分野に使用されています。
力の伝達という働きをおこなうものであり、「軸の回転速度を変える」、「回転の方向を変える」、「軸の運動方向を変えます(軸が平行しない場合)」の3つに分けられます。

ギヤの種類

ギヤには2本の軸の相対位置と回転方向によっていろいろな種類が存在します。主な種類としては以下があげられます。

ギヤを用いる装置

遊星歯車装置

かみ合う一組の歯車のうち、一方が固定され、他方は、これとかみ合いながらまわりを回る仕組みになっている歯車装置。AT車に使用されています。

差動歯車装置(ディファレンシャルギヤ)

歯車軸の中心が、他の歯車軸に回転するようになっている歯車装置。
例:自動車のディファレンシャルギヤ

歯車変速装置

与えられた回転数を、歯車を用いて変速する装置。
例:自動車のトランスミッション

ギヤの損傷形態

ギヤ損傷発生の原因の大半は、ギヤ歯面の加工精度とギヤの組みつけ、あるいは装置系に混入してくる異物の嚙みこみなどによるものであります。

スコーリング

高圧面、すべり温度上昇などにより油膜が切れ、金属面が溶着して引きさかれ、引っかき傷が生じる損傷で、歯先と歯元によく発生します。特徴は、引っかき傷と溶着による引きちぎられた痕がみられることであります。

ピッチング

繰り返し接触荷重により歯面に疲れが生じ、それによって斑点状の微孔が生じる損傷。

スポーリング

重荷重で表面下が疲労し、かなりの大きさの金属片がかけ落ちる損傷で、硬材質に発生しやすい。

圧縮機油(往復式)の要求性能

内部油

内部油は高温・高圧空気に直接接触し、カーボン化されやすいため、専用油が必要。要求性状は次の通り。

適性な粘度を有すること

カーボン化傾向が少ないこと(残留炭素分の少ないナフテン系が好ましい)

熱・酸化安定性に優れていること

水分離性が良いこと

腐食防止性があること

低蒸発性であること

消泡性があること

外部油

小型コンプレッサーの場合は内部油で共通潤滑しているが、大型の場合はタービン油、軸受油等が使用される場合もあります。

コンプレッサーのしくみ(往復式)

空気を圧縮すると、容積(体積)は小さくなり、その代わりに圧力は高まます。そして、一度圧縮された空気には、膨張して元に戻ろうとする力があります。このように空気やガスなどの気体を圧縮して高圧の状態を得るための装置がコンプレッサーであります。
一般工場をはじめ、土木建設現場(リベット用ハンマー、ロックドリル)などの空圧駆動源や、化学工業の合成用ガスの液化やビル、工場の換気装置、製鉄用送風機など、広く使用されています。

往復動型コンプレッサー(レシプロ型)

圧縮方法として、往復するピストンによってシリンダ内の気体を圧縮します。
比較的低圧から超高圧まで、小容量から大容量の気体まで圧縮可能という特徴があります。高圧を得たい時は、数段に分けて圧縮。
ポリエチレン成用コンプレッサーでは2000~3000kg/㎠の高圧を得ることができます。
この型式は内部潤滑と外部潤滑に大きく分かれ、それぞれ潤滑油に対する要求性能も異なります。
内部潤滑においてはシリンダライナーとピストンリングの間の潤滑、外部潤滑においてはクランクケース内の軸受の潤滑が求められます。

圧縮機油(回転式)

基本的な必要性状は往復動型コンプレッサーと同様。しかしながら、回転型エアコンプレッサー油は高温・高圧な空気とミスト状に撹拌されるため、酸化劣化が著しく促進されます。このため専用油が必要となります。要求性状は次の通り。

適性な粘度を有すること(潤滑性とシール性)

高粘度指数であること

熱・酸化安定性に優れていること

スラッジを生成しにくいこと

水分離性が良いこと

防錆性があること

消泡性があること

低蒸発性であること

コンプレッサーのしくみ(回転式)

空気を圧縮すると、容積(体積)は小さくなり、その代わりに圧力は高まます。そして、一度圧縮された空気には、膨張して元に戻ろうとする力があります。このように空気やガスなどの気体を圧縮して高圧の状態を得るための装置がコンプレッサーであります。
一般工場をはじめ、土木建設現場(リベット用ハンマー、ロックドリル)などの空圧駆動源や、化学工業の合成用ガスの液化やビル、工場の換気装置、製鉄用送風機など、広く使用されています。

回転型コンプレッサー

圧縮方法として、ローターの回転による体積差を利用して気体を圧縮します。
回転型コンプレッサーを分類すると、スクリュー型、ベーン(可動翼)型、スクロール型などに分けられます。
一般に圧力はさほど高くはませんが、広く使用されています。
往復動型に比べ、吐出ガスに脈動がなく、振動/騒音も少ないことが特徴であります。
ローター間の隙間をシールすることにより、圧縮される気体の漏れを防止し、また発熱を抑止する役割を負っています。

真空ポンプ油の要求性能

蒸気圧が低いこと

オイルの蒸気圧が吸引圧力に影響されないように、真空ポンプに使われる油は、蒸気圧が低いことが要求されます。
蒸気圧が高いと、排気とともに油が気化してしまい、性能が著しく低下してしまう。

水分離性

水蒸気など蒸気圧の高い物質が混入すると、真空ポンプ油の蒸気圧が高くなり、性能が低下するだけでなく、錆の発生やスラッジの生成等により、機械的な故障を起こす原因となります。

熱安定性

ポンプ内の摺動面部は摩擦により比較的高温になるため、耐熱性があることが要求されます。
熱によって油が変質してしまうと、蒸気圧が低いことや水分離性の特徴が失われ、性能が大きく低下してしまう。

特殊ガスへの安定性

真空ポンプは、空気に限らず特殊ガスを吸引することも多いので、特殊ガスによる影響を受けず、常に安定した状態を保てることが要求されます。

真空ポンプのしくみ

真空ポンプは、真空にしたい容器内の気体を吸収し、圧縮して高圧側に排出するはたらきをします。
真空ポンプの代表例としては、「油回転ポンプ」と「油拡散ポンプ」の2種類が挙げられ、真空ポンプ油も種類によって異なります。
「油回転ポンプ」では、大気圧で作動し、ローターの回転によって気体の吸収、圧縮、排出を繰り返す。
一方、「油拡散ポンプ」では、ヒーターで200℃以上に加熱し、高速でノズルから噴き出す油の蒸気の流れに乗せて気体を排出します。

油回転式真空ポンプの原理

熱媒体油の要求性能

熱・酸化安定性

熱媒体油には、ほとんどの場合密封された循環系統で長時間使用されるため、熱分解や高温酸化を受けて徐々に劣化します。
また、膨張タンク内油温が高い場合など、空気酸化が起こり、タール状物質やスラッジを生成して品質が低下するので、熱および酸化に対する安定性が必要。

腐食防止性

長期間高温で系統内の金属部分と接して循環を繰り返すため、鉄および非鉄金属を腐食せず、接続部に使用されているシール材に対しても損傷を与えないことが必要。

流動点

冷却媒体に使用されるものは、運転温度より少なくとも10℃以下の低流動点を持つ必要があり、低温流動性が必要。

蒸発圧が小さい

蒸発損失が少なく、高温時に循環経路内で蒸気閉鎖(ベーパーロック)を起こさないことが必要。

安全性

熱媒体油は、無毒であることに加え、油が漏洩し引火事故につながることを防ぐため、高引火点であることが必要。

比熱・伝熱係数が大きい

受け取った熱を素早く効率的に伝えるために、比熱・伝熱係数が大きいことが必要。

熱媒体油のはたらき

熱媒体油は、化学工業の他、繊維、建設、製紙、食品、アスファルトプラントなどの分野において、間接加熱や冷却装置の伝熱媒体として使用されます。その装置は通常、熱媒ボイラーと呼ばれる加熱装置(または冷却装置)、循環ポンプおよび循環パイプを主構成機器とし、その中に熱媒体油を封入して間接的に対象を加熱(もしくは冷却)するはたらきであります。
熱媒体油による間接加熱は、直接加熱に比べ、「常温で高温が得られる」、「温度の調節が容易である」、「均一加熱で局部的熱変質が避けられる」、「局部加熱による火災の危険等がない」などの利点があります。

絶縁油の要求性能

電気絶縁性

熱媒体油には、ほとんどの場合密封された循環系統で長時間使用されるため、熱分解や高温酸化を受けて徐々に劣化します。
絶縁油で最も重要な性質は、絶縁破壊電圧、体積抵抗率などの電気絶縁性に優れていることであり、そのためには、水分、不純物、空気その他ガスを含まないことが必要。

冷却性

電気抵抗によって生じた熱を、速やかに放散させることが必要であり、そのためには、できるだけ粘度の低い油を使用することが必要(あまり低粘度の油は引火点が低く、また蒸発減量が大きくなるため適当ではないです)。

酸化安定性

変圧器中では、温度が高いことと銅や鉄などの触媒作用によって油は酸化され、酸性物質やスラッジが生成しやすくなっています。
このような酸化生成物は、絶縁破壊電圧その他の電気特性の低下や、金属腐食を引き起こすので、絶縁油には優れた酸化安定性が要求されます。特に、使用条件が過酷な場合や、油の使用期限をより長くしたい場合には、酸化防止剤により安定性を高めた絶縁油を使用することもあります。

ガス溶解性

使用時に発生するガスを吸収しやすいことが重要。

耐腐食性

変圧器の金属部分を腐食しないことが重要。

消泡性

泡の発生にともなう絶縁破壊(絶縁状態を保持できなくなること)の進行を防ぐ必要があります。

引火点

引火の危険性を軽減するために、引火点はある程度以上高いことが要求されます。

変圧器のしくみ

変圧器は、鉄芯に巻いたコイルによって、電圧を変える働きをします。
変圧器によって電圧を変更することを変圧といいです、電圧を上昇させることを昇圧、逆に下降させることを降圧という。電圧を変える際には熱が発生するので、冷却が必要となります。
絶縁油は、変圧器、回路遮断器、蓄電器(コンデンサー)等に使用されるもので、その主な働きは機器の絶縁と冷却であります。

変圧器の概略図

放電加工油の要求性能

冷却性

加工中に発生する熱を逃がすはたらきが重要となります。

臭いが少ない

開放系で使用するため、無臭に近いことが望まれます。

毒性が少ない

作業中に肌に触れることもあるため、皮膚への刺激が少ないことが必要。

熱・酸化安定性

油の劣化による加工物のベタ付きや着色を抑える必要があります。

加工開始時、放電の食いつきが良い

食いつきがいいと、狙い通りに加工を開始しやすくなります。

放電加工のしくみ

放電加工とは被加工物である金属と加工工具である電極とを絶縁する加工液を介し、電気エネルギーを加えることで発生する火花エネルギーを用いて被加工物の金属表面を微細に除去していく加工方法であります。
一般の工作機械での加工方法と異なり非接触加工であり、超硬金属・難削材の精密加工、曲面加工、球体加工等の加工が可能であります。しかしながら、通常の機械加工の約100倍の加工時間を要することから、大量生産が難しいという問題もあります。

放電加工(型彫放電法)の原理

放電加工の種類

放電加工方法により、「型彫放電加工」と「ワイヤーカット放電加工」の2種類に大きく分けられます。

型彫放電加工

銅・グラファイト・タングステン合金等で成型された電極を被工作物に接近させ、それにより発生する電気的スパークによって微細粉砕させる加工方法。
一回のスパークで除去される量は微量でも、毎秒何万回ものスパークが繰り返し、被工作物を加工します。
通常、加工は加工液中でおこなう。

ワイヤー放電加工(ワイヤーカット放電加工)

タングステン、または黄銅製の微細なワイヤーを電極とし、1方向に巻き取りながら被加工物との間に放電を発生させ、その際に発生する熱により被加工物を溶かしながら加工していく方法。
糸鋸での加工方法に類似しています。通常加工液として、純水が使用されます。

放電加工油のはたらき

放電加工をおこなう際の加工液として使用する放電加工油のはたらきは、「被加工物と電極間の絶縁」、「加工部の冷却」、「衝撃圧力の発生防止」、「加工切屑の排除」等であります。

グリースの要求性能

適性ちょう度

潤滑油の粘度同様、グリースのちょう度は潤滑性において非常に重要であります。グリースが軟らかすぎると、漏れや油膜切れを起こしたり、グリース潤滑部以外にグリースが入り込むことで、騒音の発生や撹拌抵抗の増加、発熱が起きたりする可能性があります。
硬すぎると、抵抗が大きくなりすぎたり、油分の供給が不足したりし、潤滑不良を起こすことがあります。
ちょう度は、増ちょう剤の種類や量、基油の組成や粘度に関係しています。

酸化安定性

グリースは高温時等に空気中の酸素と反応して酸化劣化を起こすことにより、異臭の発生や、グリースの変色、ちょう度の変化および滴点の変化などを起こすことがあります。
酸化安定性を良くする目的で、酸化防止剤が添加されるが、基油や増ちょう剤の種類も酸化安定性には関係してきました。

機械的安定性

グリースは潤滑部において機械的せん断を受けることで、軟らかくなります。増ちょう剤のグリース構造が、せん断によって破壊されます。
そのため、機械的安定性は増ちょう剤の種類に依存します。
機械的せん断によってちょう度が変化し、グリース漏れ、潤滑不良、騒音などの現象が起きる可能性があります。

防錆性、腐食防止性

潤滑油同様、金属への防錆性、腐食防止性がグリースには求められます。水を使用する箇所では、錆が問題になります。
また、銅または銅合金が軸受の保持器や集中給脂配管に用いられる場合、グリースの銅に対する腐食性が問題となることがあるため、最適な添加剤によって強化されたグリースが求められます。

使用される環境、用途によっては以下のような性質も要求される場合がある

低温特性

寒冷地等でグリースが用いられる場合はグリースが硬くなり、起動時のトルクの増大や、運転時のトルクが問題となることがあります。
特に、精密機器、自動車部品、航空機部品等では低温特性の一つとして低トルク性が要求されます。

耐熱性

グリースは、熱によっても増ちょう剤のグリース構造が破壊されたり、酸化劣化を生じたりして、グリース構造が維持できなくなり、軟化や軟化による潤滑不良、騒音等の原因となります。グリースの耐熱性は、増ちょう剤の熱安定性に大きく依存するため、増ちょう剤の種類によって、耐熱温度が異なります。製鉄機械、製紙機械や自動車部品の中でも高温で使用される部品等には、高い耐熱性が求められます。
グリースの耐熱性の指標の一つとして滴点があります。

耐水性

グリースが水によって流されにくい性質や、吸水しにくい性質、または吸水や混合したときに性状変化が起きにくい性質を耐水性と呼ぶ。
このように、水に対する性質は複数あるので、グリースが使用される環境において、問題ないかどうかを考える必要があります。
製鉄機械、製紙機械では水を多く使い、また建設機械等では屋外で風雨にさらされるため、耐水性が求められます。

極圧性・耐摩耗性

高荷重や衝撃荷重がかかる部位に使用されるグリースには、耐荷重能や耐摩耗性が必要。
グリース成分中の基油粘度や、極圧添加剤の有無が関係します。

圧送性

製鉄設備をはじめ建設機械、大型トラック、搬送機等の多くの機械で、グリースをポンプで送る集中給脂装置を採用しています。
ポンプでグリースを送る場合の良否は、圧力を加えてグリースを流動させた場合の管内抵抗を、見かけ粘度によって評価します。
この数値が小さいものほど、圧送性よいとされます。

グリース漏れ

軸受等からグリースが流出すると軸受の潤滑寿命を著しく低下させ、且つ機械の故障の原因にもなります。
グリースの漏れには機械的安定性や耐熱性が関係します。

軸受音響特性

転がり軸受から発生する音と振動の性質をいう。軸受の騒音の原因としては、ちょう度が適性でないです、グリース中にゴミや添加剤等の粒子がありグリースが均質でない等があげられます。
軸受音響特性は、軸受の精度や、機械の振動等の影響もうけるため、非常に複雑であります。

グリースとは

「液体潤滑剤(基油)と増ちょう剤からなります、半固体状または固体状の潤滑剤」と定義されており、外力を与えない状態では、潤滑油のように流動することはなく静止しているが、撹拌したりして外力を与えると流動する性質を持つ。
グリースの成分は、基本的には基油(原料油)と増ちょう剤、添加剤の3つからなります。
増ちょう剤は微細な固体で、リチウム石けん、カルシウム石けん等の石けんと、
ウレア等の非石けんがあります。

上記画像は、グリース中に分散しているリチウム石けんの増ちょう剤の様子を示した電子顕微鏡写真であります。
増ちょう剤が繊維状に絡んでいる様子が見られます。この繊維が油を抱き込み、グリースの構造を維持しています。
潤滑箇所が静止しているときは半固体状のままですが、潤滑箇所が動き始めると共に流動し、更にせん断速度が大きくなると、基油に近い状態まで流動化します。そしてまた静止すると、半固体状に戻ます。このような特性はグリース中の増ちょう剤の網目構造によるものであります。

繊維構造の変化

静止しているときは、網目構造が3次元的に複雑に絡み合っているが、せん断を受けると網目構造はせん断方向に並び、せん断が止まると再び元に戻ます。
グリースの種類によっては、増ちょう剤が繊維状になっていないものもあります。

以上のように、増ちょう剤の網目構造は非常に重要であり、この網目構造が壊れてしまうとグリースは軟化したり、グリースが本来有する性能を損なってしまう。網目構造が壊れてしまう原因としては、機械的な強いせん断や、高温条件での使用があります。機械的なせん断に対するグリース構造の強さを「機械的安定性」という。
また、水分が混入することによって液状化し、漏えいする場合もあります。

グリースの特徴

グリースを用いた潤滑では、潤滑油と比べ「半固体で潤滑部のみが潤滑条件に応じ流動状となり作用し、他の部分に流れにくい、すなわち断続的な使用や給油が困難な箇所においての使用に適している」や「給油装置が比較的簡単であり、密封が充分に行われているため、塵埃の多い場所や腐食性ガスの接触する場所での使用に適している」、「グリースに含まれている石けんが金属面に吸着され、耐荷重能を発揮する」、「使用温度範囲が比較的広く、基油の流動点以下の低温環境でも使用可能である」などの特徴を有します。

これらすべての点がグリース潤滑で活用できるわけではませんが、使用環境を考慮し、最適なグリースを選定する必要があります。

ちょう度

ちょう度は、グリースの硬さを表すもので、物理的な値を示す重要なものであります。
ちょう度の分類は、NLGI(米国潤滑グリース協会)によって定められた、NLGIちょう度分類が代表的であり、現在は国際的に標準化されています。上記の表が示すとおり混和ちょう度の値により区分され、各ちょう度グレードに分類されます。

ディーゼルエンジン油の要求性能

適性粘度

エンジンが高温になっても、密封作用、潤滑作用をおこなうとともに、寒冷地でも容易に起動できるためには、適性粘度の油を使用することが必要。
粘度が適性でなければ、摩耗を起こしやすくなります。
一般に、潤滑油は粘度が低いほど粘性抵抗が少なく効率はよいが、適性粘度を下回ると油膜が薄くなり、摩耗や焼付きの原因となります。
低燃費車では、低粘度油(SAE粘度番号0W-20)の使用が燃費向上の一助となっています。これは、粘度の低いエンジン油を使用しても摩耗や
焼付き等のトラブルがおきないような設計になっています。したがって、0W-20油推奨車以外の車に低粘度油を使用してしまうと、摩耗などの
トラブルが起きる恐れがあるため、注意が必要(低燃費車に、高粘度油を使用することは、燃費の悪化にはつながるが、致命的な装置トラブルの面では問題ないです)。

粘度指数

粘度指数が高いと、温度変化に対する粘度変化が少ないので、常に適性な粘度が得られ円滑な潤滑作用が得られます。
特に粘度指数の高い油として、マルチグレードオイルがあります。

酸化安定性

エンジン内温度が高いとオイルは酸化されやすくなり、酸化されると不溶解分、ワニス分、腐食性酸性物質が生成します。
特にピストンリング溝部は厳しい条件となります。このような劣化生成物質がクランクケース内にたまってスラッジを作るのを防止し、エンジン各部を清浄に保ち、また金属が酸性物質によって腐食されるのを防止するためには、オイルの酸化を抑えることが重要。オイルの酸化を抑えるために酸化防止剤が用いられます。

清浄分散性

不完全燃焼によってできるすすや炭化物、スラッジなどが、エンジン各部に付着堆積すると色々な障害が起こます。
ピストンリングに固着してリングの動きが阻害されると、ブローバイが起き出力低下やエンジン焼付きにつながます。また、オイルストレーナーがスラッジで詰まると、オイルが供給されなくなるため、エンジンの焼付きにつながることもあります。そのため、オイル劣化物の沈着を防止し、
油中に分散される性質、すなわち清浄分散性を高めるためには、清浄分散剤が添加されます。

耐摩耗性

エンジン内部では、動弁系やシリンダライナー部には、混合潤滑領域が存在するため、耐摩耗性に優れている必要があります。
これにより、エンジンの寿命を延長させることができます。

腐食防止性

酸化生成物や水の混入により、軸受メタルが腐食されるのを防止する性質を持つことが必要。
軸受メタルは、軸を滑らかに回転させる役割を持っています。ディーゼルエンジンでは、鉛−銅合金等でできていることが多く、このメタルがオイル中の酸化物質によって腐食されると、鉛が溶け出てしまい、ヒビが入るなどの故障の原因となります。
一方、ガソリンエンジンでは、負荷条件がディーゼルエンジンよりも軽いため、環境問題からメタルに材質はアルミニウムが多く使われるようになっています。

すす分散性

不完全燃焼によるすすや炭化物質はオイル中に混入し、凝集します。すすが凝集すると、粘度増加を起こし、またオイル管を詰まらせオイル供給不足となったり、凝集したすすが研磨粉となったりし、機械的摩耗の原因にもなります。これを防ぐため、すすを細かく油中へ分散させる性能が高いことが必要となります。

酸中和性

燃焼生成物として、硫黄分による硫酸の発生があり、腐食摩耗の原因となります。また、ガソリンエンジン油と同様に酸化生成物により酸も生じるため、これを速やかに中和する性能が重要となります。特にクールドEGRを用いる方法では、排出ガスをエンジン内に送ることで、SOxの濃度が高くなりやすいため、エンジン油には酸中和性が必要となります。

低灰分、低硫黄分(DPF装着車)

エンジン油が燃焼した際に生じる灰分がDPFを目詰まりさせてしまうことから、低灰分であることが必要となります。

ディーゼルエンジンのしくみ

ディーゼルエンジンの動作(4サイクル)

吸入・圧縮・燃焼・排気の1循環をピストンの4行程でおこなうもので、クランク軸が2回転してカム軸が1回転するうちに1回の燃焼が行われます。

吸入

吸入バルブが開き、ピストンが上死点(最上昇の位置)から下降する間にシリンダ内に空気が吸い込まれます。

圧縮

吸入バルブが閉じてピストンが下死点(最下降の位置)から上昇する間に吸入行程で吸い込まれた空気が圧縮されて高温になります。
ディーゼルエンジンは空気の体積を1/20前後に圧縮して600度以上の高温にします。

燃焼

圧縮されて高温となった空気に、燃料噴射ポンプで100気圧以上に圧力を高めた燃料を噴射し、自然発火で燃焼(爆発)させてピストンを下降させます。

排気

ピストンが燃焼によって下死点まで下がると排気バルブが開き、ピストンが下死点から上昇する間に燃焼したガスが排出されます。

ディーゼルエンジンの環境対策装置

PM低減装置

DPF(Diesel Particulate Filter)

DPFは、PMをフィルターでとらえて燃焼処分する仕組みであります。エンジン油の灰分がDPFのフィルターの目詰りを起こしてしまうため、使用するエンジン油は低灰分であることが必要とされます。

ターボチャージャー

ターボチャージャーは、排気ガスを利用してタービンを高速回転させ、その回転力によって圧縮した空位をエンジン内に送り込む仕組みであります。
吸気量を増やすことで、燃料を完全燃焼させ、PMを低減します。

コモンレール

コモンレールシステムは、サプライポンプで高圧にした燃料をレール内に蓄え、各インジェクターへ均一に供給し、燃料室へ噴射するシステムであります。
「加圧」はポンプに、「制御」はインジェクターに分担させているため、燃料を超高圧で好きなタイミングで好きな量だけ噴射できます。
高い噴射圧力により、燃料の粒が小さくなり、中心部の燃え残りがなくなり、PMの発生を抑えます。

NOx低減装置

多段階噴射

多段階噴射は、燃料の噴射圧力、噴射タイミングや回数、噴射量をコントロールすることを言う。メイン噴射の前後にパイロット噴射、後噴射を行い、燃焼時間を長くすることで、PMの発生を抑えるとともに、噴射を複数回おこなうことで、燃焼室の高温化を防ぎ、NOxを低減させます。

クールドEGR

排気ガスの一部を再びエンジン内に送ることで、吸気中の酸素濃度を下げてピーク燃焼温度を下げ、NOxを低減させます。
更にEGRの効果を高めるために、吸気側に戻される排気ガスを冷却するクールドEGRが主流であります。
この方法では排気ガスをエンジン内に送ることで、エンジンオイルの劣化が促進される恐れがあるので、エンジンオイルには高い酸中和性や酸化安定性などが必要とされます。

尿素SCR

尿素SCRは、排気ガス中のNOxをSCR触媒によって、窒素と水に還元することで、NOxを減らす。
SCR触媒被毒の点で、低硫黄燃料が必要で、エンジンオイルに求められる性能としては、DPFを併せて装着している車種が多いため、その場合は低灰分オイルが必要となります。

自動車用ギヤ油の要求性能

ミッション油

シンクロ特性(シンクロナイザリングとの摩擦特性)

シンクロナイザリングと、コーン間に適度な摩擦力をはたらかせることが必要となります。

ギヤ、ころがり軸受の耐摩耗性・耐ころがり疲労性

ギヤの摩耗や、ころがり軸受の損傷を防止することで自動車の寿命延長に役立つ。

低温シフト性

低温時に高いシフト性(変速時の操作性)を実現するため、低温粘度が低いことが要求されます。

熱・酸化安定性

高温で連続使用されることも多いため、安定であることが重要。

省燃費性(低粘度化)

粘度を下げて、粘度抵抗を低くすることで、省燃費性能を向上し、燃料消費を少なくします。
低粘度ギヤ油を推奨する変速機の場合に使用します。

歯打ち音防止

歯打ち音の発生を防止するために、高温でも高い粘度を維持できることが必要となります。
このため、マルチグレードギヤ油が一般的に使用されています。

腐食防止

シンクロナイザリングの材質は銅合金のため、活性型極圧添加剤を含む潤滑油は不適となります。

ATF(Automatic Transmission Fluid)

摩擦特性

クラッチ接続時にショックが少なく、伝達トルクに優れた良好な摩擦係数を有することが重要。

粘度特性

低温から高温まで一定の粘度を保つことが望まれます。

熱・酸化安定性および清浄分散性

通常走行時は80℃程度となるため、高温使用時でもスラッジの発生を防ぎ、各部の汚れを落とすことで、長寿命化に繋がります。

消泡性

油温の上昇などによる泡立ちを抑える必要があります。

シール適合性

シール材との適合性が良好で、オイル漏れを防ぐ必要があります。

CVTフルード ※CVTとATでは内部の構造が違うため、CVTに使用するフルードにはATFと異なる性能が要求されます。

摺動面に対する摩擦、焼付きを防止する性能

高い耐熱性能(ATFよりも優れた耐熱性が必要)

せん断安定性

プーリのクランプ力を発生するための強力な作動油性能

ベルトとプーリ間の動力伝達に耐える高い金属摩擦係数

シール適合性

ハイポイドギヤ油

極圧性

終減速機に、非常に強い荷重がかかるハイポイドギヤを使用する場合は、優れた極圧性が必要となります。

耐摩耗性

使用時の摩耗を抑制することによって、ギヤや部品の損傷を防ぐ。

省燃費性

低温時においては良好な流動性を、高温域では十分な耐スコーリング性能を発揮し、省燃費に貢献することが望まれます。

熱酸化安定性

高温条件での連続運転にも耐えうる優れた熱酸化安定性が必要となります。

MTのしくみ

手動変速機(Manual Transmission)は、エンジンから伝わった動力を手動で切り替える装置であります。
自動車用の変速機としては最も基本的な機構で、自動車の普及と共に広く用いられてきたが、一部用途を覗いて採用例は年々減っているというのが現状であります。

MTの基本構造

MTは2軸ギヤ方式と呼ばれる常時かみ合い式のギヤ構造で、上にメインシャフト(アウトプットシャフト)、下にカウンターシャフトの2本のシャフトが位置し、メインシャフトにはギヤとシンクロメッシュ機構、カウンターシャフトにはギヤが組み込まれています。歯数の異なるギヤに手動で同期することで、回転速度を変えるはたらきをします。
速度の変化に合わせ増速する際には小さなギヤと、減速する際には大きなギヤと同期し、変速をおこなう。

シンクロメッシュ機構

シンクロメッシュ機構は変速時に異なる2つのギヤがスムーズにつながるように摩擦力で同期させて、かみ合わせる装置で、メインシャフトに取り付けられています。シンクロメッシュ機構の重要部品にシンクロナイザリングがあるが、一般的にその材質は銅合金(黄銅)であります。ミッション兼用ではないデフ専用のGL-5クラスのギヤ油に含まれる極圧添加剤は、高温で活性化し、銅合金を侵すという性質があるため、長期間誤使用するとシンクロメッシュ機構の性能低下や、故障につながることがあります。
そのため、シンクロナイザリングの内側は、ギヤ油の影響を受けにくいように薄い突起状に加工されています。

ATのしくみ

自動変速機(Automatic Transmission)は、ギヤをシフトすることなく、スピードやアクセルの踏み具合に応じて、自動的に変速が可能な装置であります。1985年において国内AT車比率は48.8%であったが、2010年では新車のAT装着率が98.3%(その約3割がCVT車)となっています。
自動変速機(Automatic Transmission)は、トルクコンバーター、クラッチ、変速ギヤ部(遊星歯車)、油圧制御装置等によって構成されています。

トルクコンバーター

エンジンのパワーをAT本体に伝達し、スムーズな発進を助ける

遊星歯車

変速ギヤ部。クラッチの切り替えにより最適なギヤとギヤをつなぐ

油圧制御装置

負荷や速度に応じ、油圧のコントロールをおこなう

これらにより、ATが作動する流れが1.エンジンの回転がトルクコンバーターに伝わり、ATF(Automatic Transmission Fluid)を介してAT内部に動力が伝わます。2.油圧制御装置が伝わった動力を調整し、ATFの油圧によってクラッチを作動させます。3.その際、遊星歯車の組み合わせにより最適な変速段数を決定し、駆動輪車軸に動力を伝えます。

トルクコンバーターはエンジンの力を直接受けて回転するポンプと、オイルを介して変速ギヤ部に力を伝達するタービンライナ、およびトルクの増幅機能をおこなうステータの3つのパーツから成ます。それぞれのパーツにはブレードと呼ばれる羽が付いており、この羽をオイル中で回すことにより力を伝達していく。
ATの伝達効率を向上させるために、ロックアップクラッチ付のトルクコンバーターもあります。一定速度以上になると、ロックアップクラッチによってエンジン側とギヤ側の車軸が直結され、効率よくエンジンからの動力が伝達され、省燃費効果に貢献します。

終減速機のしくみ

終減速機には、ディファレンシャルギヤ(差動ギヤ)とハイポイドギヤが組み込まれており、車両がスムーズに曲がり、スリップさせないために内輪と外輪に回転差を生じ(差動)させる役割と、車の推進力を必要なだけ得るために、トランスミッションから回転数を下げ、トルクを増大させて伝達する役割を果たしています。

ディファレンシャルギヤの構造

ディファレンシャルギヤ(差動ギヤ)

車がカーブを曲がる時、内輪差(内側と外側の車輪の速度差)が生じます。
ディファレンシャルギヤは、それぞれを吸収しつつ動力源から同じトルクを振り分けて伝えるギヤであります。
つまりは、1つのエンジンから2つの異なる回転速度を伝達する装置であります。
ディファレンシャルギヤのリングギヤには左右の車軸につながるサイドギヤと、その両方をつなぐピニオンを収めたディファレンシャルケースが直結しています。
外側のリングギヤに動力が伝えられると、ディファレンシャルギヤ全体が回転します。

一方、車輪の片方を固定し、リングギヤを回した場合、もう一方の車輪が2倍の速度で回転します。車輪の回転数が左右で異なってくると、無段階に変動して両輪の回転数の平均値がリングギヤの回転数と等しくなります。この機構によって、直線でもカーブでも滑らかに走行することが可能となります。

ハイポイドギヤ

トランスミッションからの回転数を下げ減速させ、トルクを増大させるはたらきをします。
これによって、走行に必要なだけの回転数を得ることができます。
この部分には、ハイポイドギヤが使用され、非常に強い荷重がかかります。

ハイポイドギヤ

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